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労働組合Q&A−誠実交渉義務−


 先日、我社の従業員が個人加入の労働組合に参加し、団体交渉を申し入れてきまし
た。団体交渉の場には労働組合の上部団体の役員も参加するとのことですが、これに応
諾する義務があるのでしょうか。また注意すべきことがありましたら教えてください。


A 職場のトラブルが高じて個人加盟の組合に駆け込む人が最近では増えてきました。
これらの組合は思想的な違いや運動方法の違いからいくつかに類型化され、企業にとっ
ては必ずしも歓迎できないところもありますが、追い詰められた労働者の最後の駆け込
み寺として一定の役割を果たしているのも事実です。
労働者にとっては止むに止まれず駆け込むわけですから、まずはそうなった原因をはっ
きりとさせることです。その中で企業に不法行為があれば素直に襟を正して真摯な対応
をされることが重要です。それでも解決しないときは原則として団体交渉を受けざるを
得ませんし、上部団体役員の団交参加も認めざるを得ません。(労組法6条)なお、団
交拒否は不当労働行為(労働組合法7条2号違反)となります。
 しかし、必ずしも労働組合からのすべての団交要求に応ずる必要はありません。
 @労働組合や上部団体が労組法2条の適格要件を満たしていない場合
 A組合員以外の労働者の労働条件に関する要求の場合
 B団体交渉の要求内容に違法性が認められる場合や、政治目的など労使交渉になりえ
  ない要求の場合
 C要求内容は正当だがその手段に一部でも違法性が認められる場合


 また、必ずしも労働組合が要求してきた団交日程に応じる必要もありません。正当な
理由もなく団体交渉に応じないことが問題なのであって、業務の都合等によって日程を
変更するとか、交渉時間を指定することも、原則不当労働行為にはなりません。
しかし合意形成を求める組合の要求に対して日程を延ばし延ばしにしたり、明らかに形
式だけの対応では、誠実交渉義務違反として不当労働行為になりますので、注意が必要
です。正当な要求に対しては、会社は可能な範囲で応えなくてはなりません。


 参考までにどのような場合に不当労働行為となるのか記載しておきます。
・労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入したり結成しようとしたこと
 、労働組合の正当な行為をしたことのいずれかを理由としてその労働者を解雇したり
 、不利益な取り扱いをすること
・労働者が労働組合に加入しないこと、労働者が労働組合から脱退することのいずれか
 を雇用条件とすること
・使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉することを正当な理由がなく拒むこと
・労働組合に対する支配介入をおこなうこと(経費援助など)
・労働委員会に対し使用者がこの条文の規程に違反した旨の申し立てをしたこと、中央
 労働委員会に対し再審査の申し立てをしたこと、労働委員会が労働争議の調整をする
 場合に労働者が証拠を提示したり発言したことのいずれかを理由として解雇し、不利
 益な取り扱いをすること


<参考>

 誠実交渉義務違反としてカール・ツアイス事件があり、誠実交渉義務の定義・基準が
確立しています。「使用者は自己の主張を相手方が理解し、納得することを目指して、
誠意をもって団体交渉に当たらなければならず、労働組合の要求や主張に対する回答や
自己の主張の根拠を具体的に説明したり、必要な資料を提示するなどし、また、結局に
おいて労働組合の要求に対し譲歩することができないとしても、その論拠を示して反論
するなどの努力をすべき義務があるのであって、合意を求める組合の努力に対しては、
右のような誠実な対応を通じて合意達成の可能性を模索する義務があるものと解すべき
である。」




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