Q 労働者Aは度重なる注意にも関わらず再三遅刻をしてくるため、この度就業規則に
照らし、減給の制裁をおこなうこととしました。労基法では減給の制裁は1回の額が平
均賃金の1日分の半額以内、数次の総額が一賃金支払期における賃金総額の10分の1以内
となっているので、遅刻してきた時間分の賃金カットと、減給の制裁を行いました。具
体的にはAの3ヶ月間の賃金総額は205,000円、210,000円、215,000円で630,000円にな
ります。また基準内賃金は172,000円です。月平均所定労働時間が172時間ですので、1
日当たりが8千円の賃金として遅刻1時間のため1千円の賃金カットをした上で、1日
あたりの平均賃金は(3ヶ月の暦日数が92日として)630,000円÷92=6,847円となりま
すので、その半額の3,423円として合計4,423円をカットしました。
しかしAは『1日の平均賃金の半額を超えた賃金カットは違法』と、この処分に異議を
申し立ててきました。この場合、Aの言うことの方が正しいのでしょうか?
A 結論を申しますと、会社の対応に問題はありません(あくまでも就業規則に懲戒規
程として減給処分について記載されていることが前提ですが)。
この例でいう1千円は実際に労働していない1時間の賃金をカットしただけですから、
減給の制裁にはなりません。ノーワークノーペイの部分と減給の制裁の部分でそれぞれ
分けてカットをおこなうことは適法です。なお、減給の制裁と混同しがちな処分として
@出勤停止を命じて、その間の賃金を支払わない場合
A昇給停止による不利益
B降格・降級・降職による賃金減
C月給制を日給月給に変更することによる不利益
などが考えられますが、これらは減給の制裁にあたらないとされています。
ところで、遅刻が数次に及びその減給の制裁が一賃金支払期における賃金総額の10分
の1を超えた場合はどうなるでしょうか?例えばAさんの今月の本来の賃金総額が
210,000円だったとして21,000円を超えるようなときです。
この場合は、翌月の賃金から減給することになります。また、総額を超えてしまった部
分を賞与から引くことも可能です。
なお、このようにノーワークノーペイによる賃金カットと、減給の制裁をおこなうとき
の賃金カットは計算根拠が違ってきますので、注意してください。平均賃金を求めると
きは算定しなければならない事由が発生した日(減給の制裁の場合は制裁の意思表示が
相手に伝わった日)以前3ヶ月間に支払われた賃金総額を総暦日数で除して求めます。
(賃金締切日がある場合は直前の締切日から3ヶ月以前。)
このとき、通勤費や時間外割増なども含みますが、臨時に支払われる賃金や賞与は含み
ません。また、産前産後休暇など一定の日は総暦日数から減じて計算することになりま
す。詳細は
神奈川県のホームページにわかりやすい記述がありますので、そちらをご参
照ください。
ノーワークノーペイでカットする賃金は通常の賃金計算方法で求めるやり方ですから、
一般的には(365日−年間休日日数)÷12ヶ月×1日当たり所定労働時間で1ヶ月あたり
の所定労働時間を求め、賃金額(予め賃金規程で控除項目を定めておく必要があります
。)からこの時間を除して1時間あたりの賃金単価を求めます。